ガイドブックのガイドブック
シリーズ紹介・短評
- Travel Guides, City Guides, Classic Overland Routes
- Lonely Planet Publications
- 定番、Lonely Planet社のシリーズ。地図をはじめ体裁もよく練られている。出版点数が膨大なだけに、完成度には「ばらつき」もある。概してライターの人数が少ないタイトルの方がわかりやすい印象。格安旅行向けのイメージが強いが、地域別タイトルは中級旅行向けの情報が充実している。
- Eyewitness Travel Guides, Eyewitness Top 10 Travel Guides
- DK Publishing
- わが道を突き進む図説ガイドブック。装丁は美しくイラストや写真を見ているだけで楽しめる。ランドマークなどをひと目で把握できる都市別のガイドは実用性もきわめて高い。情報の新しさや充実度は期待できないが、街歩きにはうってつけだ。リビングの「置物」としても非常に見栄えがする。
- Bradt Travel Guides
- Bradt Travel Guides
- 恐ろしくエキセントリックなディスティネーションのガイドブックを刊行している。古き良き時代−1990年代前半頃まで−のLonely Planetを彷彿とさせるシリーズだ。「古き良き時代」のLonely Planet同様、写真は少なく、グラフィカルなアピールはまったくない。Lonely Planetが逃がした「柳の下に一匹しかいない鰌」を捕まえている。
- Rough Guides, Mini Rough Guides
- Rough Guides
- 名前のとおり「Rough」なガイドブックであったが、成長中のようだ。どちらかと言えばマニアックな内容が特徴。良くも悪くもライターの特徴が出るので、タイトルごとに嗜好が合うかどうかかなり違ってくる。
- Footprint
- Footprint Handbooks
- サンプリングがまだ不十分だが、完成度は高い模様。収録されている情報はきわめて詳細にわたり、対象地域の選定も玄人好みである。創世記のLPのように少人数のライターで執筆している点も特徴といえよう。
- Let's Go
- Let's Go Publications
- 格安旅行のガイドブックとしては随一の老舗である。しかし今日では性格が分かりにくくなっている感が否めない、個人的にはあまり馴染めず、まともに利用したタイトルがない。
- Time Out Guides
- Penguin Books
- 充実したヨーロッパの都市別ガイドを揃えている。今のところ収録していないが、飲食店情報やショッピング情報に特化したタイトルもある。読み物的な性格が強く、2回目以降の訪問に向くシリーズと言えそうだ。
- Insight Guides
- APA Publications
- タイトルごとのばらつきはあるものの、文章や取りあげているエピソードが面白い。実用性は乏しいが、このシリーズを読んでおけば、ちょっとした「事情通」になれる。
- 地球の歩き方
- ダイヤモンド・ビッグ社
- 並べてみると「口コミ情報」をそのまま掲載するというスタイルが相当に独特であることが改めてわかる。口コミ情報はインターネットに移行しつつあるこれから、どのような方向へ進むのかに注目したい。
- ワールドガイド、ポケットガイド
- JTB出版事業局
- ワールドガイドは中級以上の旅行向けとして、非常にまとまりがよい。反面、ワールドガイドの存在はポケットガイドの位置付けを分かりにくくしている印象がある。
- るるぶ情報版
- JTB出版事業局
- 「お遊び系」であることを馬鹿にする向きもあるが、日本語のガイドブックとしてはもっともコンセプトがはっきりしていて、旅行者の動線にマッチすることが多いと思われる。「イタリア・ロンドン・パリ」を1冊にまとめてしまうような発想はなかなか見あたらない。
- ブルーガイドわがまま歩き
- 実業之日本社
- 個人旅行向け情報を充実させた「るるぶ情報版」という印象。よい意味で他社各シリーズの「おいしいところ取り」をしている。比較的新しいシリーズのせいか、今のところタイトルごとの完成度のばらつきは大きいようだ。
- 旅行人ノート
- 旅行人
- ターゲットを特定の層に絞った、コンセプトのはっきりしたガイドブック。極めてユニークだが、日本語書籍でこのスタイルの出版を成り立たせるのは並大抵の努力ではないだろう。
- ワールド・カルチャーガイド、ヨーロッパ・カルチャーガイド
- トラベルジャーナル
- 読み物として面白い。Eyewitness Travel Guides のような美しさはないが、図版も多用されている。もう少し実用性が上がれば、Eyewitness に相当する地位を日本語ガイドブックとして確保できるのではなかろうか。
- カルチャーガイド・トラベラー
- トラベルジャーナル
- ツアー旅行者向けを明確に打ち出したシリーズ。ある意味「潔い」コンセプトだ。プロセスから旅を組み立てる個人旅行者と、出来合の旅行を購入するツアー客の二極分化は進行していると考えられるかもしれない。
- 旅の指さし会話帳
- 情報センター出版局
- 旅行用に特化した絵解きの会話集で、日本では今までなかったカテゴリーと言える。語学専門書としては不正確な箇所も指摘されるが、通常の観光旅行ならば使い勝手は非常によい。本格的に学習するのなら専門のテキストを利用すべきであろう。
...で、結局
宿探しや交通機関の手配を現地でやる場合、Lonely Planet社の地域別タイトル、「地球の歩き方」「個人旅行」「わがまま歩き」などのシリーズから1、2冊を選ぶのが現実的であろう。アフリカやチベットのような「ガイドブック過疎地帯」では「旅行人ノート」もターゲットになる。
パッケージツアーであったり、宿や交通機関をあらかじめ手配した旅行ならば、「ワールドガイド」が結構適している印象である。「るるぶ情報版」でも必要な情報のほとんどをカバーできてしまうかもしれない。
読み物を兼ねた補助的なガイドブックとして、トラベルジャーナルのカルチャーガイドや、Eyewitness Travel Guides を用意すると、旅行の幅がぐんと広がる。旅行の期間が短いせいか、日本人の観光客はこうした類の書籍にこれまで関心が少なかったようだ。しかし、テーマ性のある旅行を求めるならば、これらのシリーズは見逃せない。
ガイドブックからはややはずれる部分もあるが、「フレーズ・ブック」として「旅の指さし会話帳」を収録している。一般的なガイドブックに付属する単語帳よりは格段に使いやすく、旅行の楽しみを広げる一助となろう。